空いた時間を利用して数時間だけ働くスポットワーカーという働き方が広く普及しています。学生や副業を探す会社員からも人気があり、人手不足に悩む企業の需要と合致しています。労働市場の変化によって企業が雇用できる人材にも変化が生まれています。人材不足に困っているときにはスポットワーカーの利用も考えてみましょう。
■アルバイトなど従来の働き方との違い
短期間での労働形態としては、従来は短期のアルバイト、パートタイムなどが一般的でした。このような従来の働き方との違いはその気軽さです。スポットワーカーは継続的に働くわけではなく、履歴書や面接が不要なこともあります。そのため、アルバイトは大変でもスポットワーカーなら気軽に働けるという人も多くいます。単発、数時間単位で働けるスポットワーカーの働き方によって、労働場所や就業場所の自由度が高まりました。学業や育児、介護といった事情で働くことを断念していた人も、スポットワーカーとして就業できる機会を創出できます。アルバイトが難しかった人もスポットワーカーとして働ける可能性があります。
■スポットワーカー数の推移
スポットワークの仲介企業で構成されるスポットワーク協会によれば、2024年5月末の時点でスポットワーク登録者数は約2200万人で右肩上がりに増加しています。スポットワーカーの増加には、企業側の需要も大きく影響しています。
労働市場の調査を実施しているツナグ働き方研究所によると、24年3月の新規求人数は8万3015件で、23年6月より10ヵ月連続で全月を上回りました。需給がひっ迫することによって時給も上昇傾向にあり、今後もスポットワーカーの活躍が期待されています。
■スポットワーカーを採用する場合の注意点やポイント
スポットワーカーならいつでも簡単に雇用できると考えるのは危険です。そこで、スポットワーカーを採用するときの注意点やポイントについて紹介します。
・スポットワーカー向け研修方法・マニュアルの整備
長期雇用のアルバイトと比べて、スポットワーカーは教育研修や業務経験を積む機会が少ないケースが少なくありません。そこで経験に乏しいスポットワーカーが受けてすぐに活用できるような研修方法、マニュアルが必要です。スポットワーカーを利用する企業の多くが、就業日に業務マニュアルを読んでもらったり、実務研修を受けてもらったりといった形式での研修を行っています。時間が限られるなかでも、スポットワーカーが即戦力となれるような工夫が多くの職場で採用されています。
・業務範囲の明確化
スポットワーカーを利用するときには、事前に何の仕事を依頼するのか具体的に決めておきます。そして可能であれば、スポットワーカーに対応する従業員を決めておくようにします。スポットワーカーがどこまでの範囲を業務とすればいいのかわかりにくいときや、疑問があるときに対応する人が複数いると混乱します。そこでひとり担当を決めておけば、業務範囲を明確に説明でき、スムーズに業務を遂行できるでしょう。
・スポットワーカーも労災保険加入が必要
基本的にスポットワーカーは、短期間の勤務となるため、雇用保険や健康保険の対象にはなりません。しかし、労災保険については、スポットワーカーであっても適用対象です。つまり、スポットワーカーに対しても労災の手続きが発生します。スポットワーカーがケガをした場合など労働災害が発生したときには、労災保険の請求手続きと労働者死傷病報告の提出が求められます。業務中の事故は可能な限り避けられるように、スポットワーカーに対しても業務に関する安全や衛星の教育を徹底してください。
企業の人手不足を背景に、スポットワーカーの需要は今後も高まっていくと予想されています。人材を取り合うような時代においては、正社員や契約社員といったフルタイム勤務だけでなくスポットワーカーを受け入れていくことも視野に入れてみましょう。