株式会社帝国データバンクは2026年1月8日、従業員の離職や採用難などによる人手不足を要因とする「人手不足倒産」の発生状況について調査・分析を行った結果を発表しました。
調査・分析結果から、建設業・物流業を中心に倒産件数が高水準で推移している実態に加え、今後は賃上げに対応しきれない企業による「賃上げ難型」の人手不足倒産が新たなリスクとして浮上していることが示されています。

■2025年の人手不足倒産は「427件」。3年連続で過去最多を更新
採用難や人件費高騰が常態化するなか、人手不足は一部業界にとどまらず、企業経営全体を揺るがす課題となりつつあります。実際に、今回帝国データバンクが発表した調査・分析結果においても、従業員の離職や採用難を背景とした「人手不足倒産」が過去にない水準で拡大している様子がうかがえました。
同社の集計によると、2025年に発生した人手不足倒産(法的整理、負債1,000万円以上)は427件となり、前年から85件(24.9%)増加しています。年間件数が400件を超えるのは初めてで、3年連続の過去最多更新となりました。
同社は、採用難や従業員の退職に加え、人件費の上昇が企業経営を圧迫している点を背景として挙げており、人手不足が事業継続に直結するケースが増えていると分析しています。

■建設業・物流業で顕著。“労働集約型”の業種に広がる影響
業種別では、建設業が113件と初めて100件を超え、物流業も52件と過去最多となりました。帝国データバンクでは、時間外労働の上限規制の影響を受けやすい両業種において、人材確保の難易度が一段と高まっている点を要因の一つとしています。
このほか、老人福祉事業や美容業、警備業、労働者派遣業など、労働集約型の業種でも人手不足を理由とした倒産が増加しており、同社は人手不足倒産が特定業界に限らない広がりを見せていると指摘しています。

■従業員10人未満が約8割。小規模企業ほど影響が顕著
人手不足倒産のうち、全体の77%にあたる329件は「従業員10人未満」の小規模企業でした。同社は、小規模企業では従業員1人の退職が事業運営に与える影響が大きく、人手不足が即座に経営危機につながりやすい構造があると分析しています。また、帝国データバンクが別途実施した景気見通しに関する調査では、多くの企業が人手不足を経営に影響を及ぼす重要課題として認識していることも明らかになったとのことです。

■「年収の壁」緩和に期待も、“賃上げ難型”倒産に警鐘
調査では、いわゆる「年収の壁」の引き上げにより、非正社員の働き控えが緩和されれば、人手不足解消につながる可能性がある点にも言及しています。一方で、企業による賃上げの動きが加速している現状について、同社は注意を促しています。
2025年の春闘では、民間主要企業の賃上げ率が平均5.52%と高水準となり、2026年も賃上げ機運は続くと見られています。同社は、こうした動きに追随できない小規模企業を中心に、“賃上げ難型”の人手不足倒産が今後も高水準で推移する可能性があるとの見解を示しています。

今回の調査結果では、人手不足倒産が量的拡大だけでなく、質的にも変化しつつあることが示されました。帝国データバンクは、賃金水準や人材定着策への対応力が、今後の企業存続を左右する重要な要素になると分析しており、とりわけ中小・小規模企業にとっては、人事戦略の見直しが避けられない局面に入ったといえそうです。
出典:https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000001232.000043465.html