前回に引き続き「部下ができた人へ~シンプル・マネジメントのすすめ⑤」です。今回も新しく部下や後輩ができる人、また現在も部下がいるがもう一度、自分のマネジメントを見直してみようかなと思っている人向けのコラムです。

■決めたことが実行されない

素晴らしいアイデアを思いつき、綿密なプランを作ったからといって、そのまま実行されるわけではありません。
アイデアやプランとそれを実行する間には、大きな溝があります。
それは個人についても組織においても大きな課題のひとつです。
ではどうするのか?
答えはコミュニケーションです。
コミュニケーションこそが、その溝に橋を架けるのです。
もちろん実行に移すためには、相応の量と質のコミュニケーションが必要となります。
アイデアやプランを作りだす人と実行する人が同じであれば、もともと溝は存在しませんが(あったら行動力そのものの問題です)、違う場合は、両者の信頼関係が築かれているのかが問われます。
3~5分の会話が、そのコミュニケーションと信頼関係を熟成します。
そしてアイデアやプランと実行との間の溝に橋を架けるのです。

■動きのスピードが上がる

個人と組織の双方にとってのもう一つの大きな課題は、スピードですね。
業務が実行される速さは、今や個人にとっても組織にとっても死活問題です。
ところが、従来のマネジメント手法では、どうしてもこのスピードが遅くなりがちです。
なぜなら従来型では、部下育成に際して、上司は「教える」「指導する」などの手法を用いて部下を教育します。
もちろんこちらも重要な手法ですが、これだけですと、指示を仰がないと行動できない部下を育ててしまうことになりがちです。
日々変化する現実への対応が遅れ、会社全体のスピードダウンにつながりかねません。
他社に先を越されたり、環境変化に対応できなかったり、社員の熱意が低下する恐れも出てきますね。
これらを解消するためには、社員一人一人が目の前の課題を的確に判断し、対応していく自立性を持っていくことでしょう。
そのような部下を育成する必要があります。
現在、様々な企業では、部下育成の手法としてコーチングが盛んに取り入れられています。
コーチングは、部下の自立性を養ううえで有効だと言われています。
コーチングでは基本的にアドバイスはせず、問題解決もしない、ただ問題との付き合い方をコーチします。
これにより部下のそれぞれが、現場で起こることに、随時、上司の指示を仰がなくても自分で対処できるようになるのです。
それにより、すべてのスピードが速まります。
その結果、組織全体の目標達成、成長のスピードが速まります。
常に新しい情報を取り込みながら、アイデアのアップデートや計画の修正、戦術の変更にも対応できますね。
組織の成長スピードを上げるのは、上司の叱咤激励ではありません。
スピードは社員一人一人のレベルに比例します。
また社員のコミュニケーションの熟成の度合いにも比例します。
ともに上から指示してできるようなものではなく、日々の積み重ね、作り上げられていくものだと思います。
今回はここまでとなります。お読みいただき、ありがとうございました。
次回でこのテーマの最終回です。