これまでは、「応募編」「選考編」でのミスマッチについて、原因と対策を探っていきました。
今回は「入社後編」です。ここでは早期離職にならないための行動について、あらためて探っていきたいと思います。

■入社後のミスマッチ

企業が明確な採用目的を持ち、その内容を正しく候補者へ伝えることが、中途採用のミスマッチを防ぐための一番大切なポイントです。
ですから、企業の課題や入社後に達成して欲しいこと、期待する成果の共通認識が持てていると、入社後のミスマッチは起こりにくいでしょう。
営業やマーケティングなど、担当する領域や数値目標を具体的に提示しやすい職種では、他の職種と比べて意識のすり合わせを行いやすいです。
入社後の担当領域と目標が明確だと、選考中もお互いに考察が具体的となり、納得して入社することが、その後の活躍にもつながりやすいでしょう。
一方、採用後にミスマッチを起こしてしまう原因としてよく見られるのが、採用目的が、人数合わせになってしまっている場合です。
また「このあたり事や、できればこの辺も担当してほしい」という漠然としたニーズでの採用も、該当します。これは、企業の採用課題が明確でなく、具体的な採用プランに落とし込めていない場合に起きる可能性が高いです。
しかし、意外に自社がこの問題に陥っていることに気付いていないことが多いのです。
転職者は入社をしても何をすれば良いのか、何を達成すれば会社に貢献でき、自分がどう評価されるのかというゴールが分からない。
そのため、実力があっても思うようなパフォーマンスが出せず、あるいは単純に「思っていたのと違った」という理由で、早期離職につながってしまいます。
例えば、企業が事業成長のため急遽、中途採用を行うとして、その採用要件を「会社や事業を発展させるオールラウンドプレーヤー」と定義したとします。
漠然とした定義でも応募段階ではっきりと伝えられていれば問題はありません。なぜなら自社の要求を正しく伝えた上での応募は、採用の目的に合意が得られているからです。
必然、応募者も事業拡大という目標に向けて、自分がどのように貢献できるかを考え、自発的に動ける方が対象となりますね。
問題は、企業と候補者の目線が合っていない場合です。


入社後のミスマッチを防ぐための2つ目のポイントが、企業内での経営者・人事・配属先の三者間での採用目的の認識合わせです。
立場の違いによる認識のずれは、入社後の定着の成否を分けるリスクをはらんでいます。
特に専門職などの採用において選考時に確認すべきポイントは、専門領域でどのような結果を残してきたのか、それが達成されたのはどのような環境下だったのか、その人の役割は明確だったか、残した結果に対してどのような評価を受けてきたか、などです。
実力の確認とともに、成果を出すことへの再現性があるか、自社の置かれている環境下で結果が出せるかの判断につながりますね。
企業は候補者の採用後の姿まで描いておかなければなりません。
どんなに優秀な人材でも受け入れるチームとの相性があるため、入社後の配慮までしておくことが必要です。
入社後は、部門やチームメンバーなどの受け入れ側が、入社者の任務・達成すべき仕事を理解しておくことが大切になります。
入社者と受け入れ側の目線がそろっていると、同じ目標に向かって進むことができるため、引き継ぎの効率が良く入社後の成長スピ―ドも早くなりますね。
どれだけ優秀でスキルがある人材を採用できたとしても、受け入れ体制が整っていないと、企業はその能力を十分に生かすことができません。
ミスマッチによる早期離職は、チームメンバーなど周囲への影響も大きい。
業務の引き継ぎのために費やした時間・労力だけでなく、メンタルにも影響を及ぼすことが多々あります。
もちろん、多大なコストも発生します。目に見えるのは人材エージェントや転職サイトに支払ったコストのみですが、面接の対応や受入れの手続き、導入研修にかけた時間や労力、採用に関わった人たちが本来の業務をしていた場合に貢献できたであろう利益などを考えると、損失は計り知れないですね。
あらためて採用は非常に難しい業務です。しかし、企業の発展のためには欠かせないものでもあります。
それぞれの採用プロセスでできることを見直し、ミスマッチなく入社後に活躍する人材を獲得するために、ますますのご活躍を期待しております。