日本において、ここ数年急速に広まっている「アルムナイ」。
アルムナイ採用は、もともと海外の企業で生まれましたが、昨今、日本でも注目されるようになりました。
アルムナイ(alumni)という言葉はalumnusの複数形で「卒業生、同窓生、校友」の意味を持っています。卒業生、同窓生、校友という意味から転じて「企業の離職・退職した人の集まり」を指します。
アルムナイが注目される背景として、人材不足の慢性化があります。
企業にとって離職者や退職者も貴重な人的資源であると捉え、再雇用や新たな採用につなげるための関係性を保つことが大切だと考えられているのです。
日本では従来、結婚や介護、配偶者の転勤などによる離職者の出戻り・再雇用制度がありました。
一方でアルムナイの考え方は、退職理由にかかわらず「転職者(離職者)」の再雇用や、ネットワーク活用を推進することに特長があります。
しかし、「制度を取り入れたいけど何からはじめていいかわからない」といった疑問をお持ちの方も多いのではないでしょうか。
そこで、アルムナイの基礎から再雇用への働きかけ方、アルムナイネットワークの形成手順やサービスを紹介します。

■アルムナイのネットワークを構築

アルムナイのネットワークは自然にできることもありますが、大抵の場合は企業自体が呼びかけたり、インターネット上にポータルサイトを作ったりするなどしてネットワーク化を図ります。
ポータルサイトはハードルが高い…という場合は、アルムナイ同士やアルムナイと社員が情報交換できる、SNS(ソーシャル・ネットワーキング・サービス)のグループ機能を活用したりすることで、ネットワーク化を推進できるのではないでしょうか。
そこに対し、復帰したアルムナイの働いている様子や、社内の雰囲気、最新動向など、多くの情報を定期的に提供していくのも良いと思います。

■アルムナイの交流を支援する

次に、アルムナイ同士の交流の場を作りましょう。
オンライン飲み会でも良いと思います。お互いに近況報告する場を設けることで、懐かしい元同僚に会う楽しみだけではなく、他の職種の情報を得ることもできます。
アルムナイが今の職場で抱えている悩みについて異業種で働いている人、フリーランスになっている人から第三者の視点でアドバイスをもらうこともできますね。このように、アルムナイの交流の場で元社員は、自身の見解を広げることができます。

■退職後も、つながり続ける価値のある社員・企業であること

アルムナイとつながり、よい関係性を保つにはまず、アルムナイ自身がつながり続けたいと思える社員がいたり、企業カルチャーがあったりすることが大切です。
キャリアアップや家庭の都合、学び直しなど、企業を離れる理由は人それぞれです。終身雇用が崩壊し、雇用の流動化が進む今、他社に転職した人材を「裏切り者」とする風潮などがあっては、アルムナイの活用やアルムナイネットワークの構築は難しいでしょう。
アルムナイについての考え方を社員に対して説明・研修など行うことで、つながり続けるメリットを伝えたり、カルチャーを醸成したりすることが第一歩です。
また、アルムナイ活用のポイントとして、自社の受け入れ態勢ができていることも重要です。
雇用の形に柔軟性を持たせ、場合によっては業務委託などで受け入れることも検討できるでしょう。また形式上だけではなく、多様な価値観を持った人材や、他社で培ったカルチャーを持った人材を受け入れる姿勢・風土があることでアルムナイ活用は前進すると考えられます。
今回は、ここまでです。次回、(後編)に続きます。