昨今、採用マーケットの回復基調と共に求める人材がなかなか集まらないという声が多く聞かれるようになってきました。背景には求職者の価値観が多様化したことが要因の一つと考えられており、応じて採用活動をアップデートしたいと考える方も多いのではないでしょうか。
今回は求職者の動向変化を踏まえ、PR・メディア戦略の視点から「効果的な採用活動」を実現するためのメディア戦略について考えてみたいと思います。

■リアルな情報を求める求職者

採用活動のオンライン化はすでに有効活用されています。
すべての選考過程がオンラインで実施されることもある中、求職者の動向についても変化しています。
新卒採用の対象層Z世代は、日常的に複数のプラットフォームを活用していると言われていますが、その傾向が顕著に現れてると言えるでしょう。
企業が一方向に発信する情報では足りず、よりリアルな、第三者が発信している情報を求めているのです。
会社のリアルな姿を求めているのは新卒採用者だけではありません。
中途採用の候補者についても同様の傾向が見られます。
就職・転職の際に企業情報を調べる手段について、「採用ホームページ」に次いで「口コミサイト」も注目されているようです。会社が発信する情報だけでなく多角的に第三者からの情報も複合的に調べているのは、新卒・中途に関係ない動向と言えるでしょう。
企業は従来のような自社サイトのみでの情報発信から、このような求職者のニーズに合った多面的な情報発信が求められています。


■情報発信で意識したいメディア戦略ーPESOモデル

多面的な情報発信が必要な中、多く存在するメディアの中でどのような媒体を選び情報発信するのが良いのでしょうか?
そこで皆さんに是非意識していただきたいのが、消費者の接するメディアを4カテゴリに分けた「PESOモデル」です。それぞれのメディアの頭文字を取っており、具体的には下記のメディアが挙げられます。

・Paidメディア(媒体出稿)
「Paid(支払う)」。企業が費用かけて情報を発信するメディアです。
 ※短期的/一時的な集客により、新規アプローチや認知獲得に貢献
 例)ブランド広告、採用媒体、ナビサイト

・Earnedメディア(パブリシティによる情報発信)
「Earned(獲得する)」。第三者からの信頼の獲得により第三者目線から情報が発信されるメディアです。
 ※接点の強化、信頼関係の強化に貢献
 例)メディア掲載や口コミサイト

・Sharedメディア(SNSを通じた情報発信)
「Shared(共有する)」。SNS上で第三者から発信される情報が拡散、共有されるメディアで、元々アーンドメディアに含まれていました。
 InstagramやTwitter、YouTubeなどのソーシャルメディア上で情報発信され、それが消費者によって拡散されること で情報が多くの人に届きます。
 ※情報の共有・拡散により、集客や信頼関係の強化に貢献
 例)消費者が起点の、TwitterなどのSNSによるコメントや口コミ

・Ownedメディア(自社所有メディアによる発信)
「Owned(所有する)」。企業が自社で運営し情報を発信するメディアです。
 自社ホームページやブログ、公式SNSなどが含まれます。
 発信するコンテンツやその内容を自社で決められることから、商品やサービスのアピールや、企業のファンやリピーターの獲得に期待できます。
 ※情報の蓄積により、長期的な活用が可能。
 例)自社サイト・ポータルサイト、オウンドメディア、自社ブログなど

PSEOモデル

これらのメディアを活用し情報発信をすることで、より多角的・適切に情報を届けることが期待できます。
特に、自社が現在どのポジションにいるのか?採用したい人物像は?など、
自社の状況を改めて見直し、最適な予算配分の上で発信していくことが重要となります。

■情報を届けるターゲットの順番

まずは自社の情報を求めている“顕在層”に向け、自社サイトや採用オウンドメディア等のOwnedメディアに情報を蓄積していきます。
自社を検討している層に対して、しっかりと適切かつ十分な情報を提供することが重要です。
情報を蓄積した次のステップとして、自社を知らないような“潜在層”に対して広く認知が期待できる、ブランド広告やナビサイト等のPaidメディアへの出稿、信頼関係の構築が期待できるEarnedメディアでの情報発信でいかに自社の情報を拡散するかが鍵となります。
これらの露出強化により、SNS等のSharedメディアでも情報が拡散され、新たな”顕在層”の獲得も見込めるでしょう。
一極集中型の情報発信ではなく、このように多角的なメディアから採用候補者へ向けてコンテンツを蓄積・拡散していく戦略設計が今後より求められるでしょう。


■まとめ

・ 新卒・中途を問わず求職者は会社の「リアル」な姿を求めており、企業には多面的な情報発信が求められている
・ PESOモデルを活用することで、求職者の求める多面的な情報の蓄積・拡散が期待できる
・自社の情報発信の状況や求める人物像を改めて検討し、いかに満遍なく発信していくかの戦略設計が重要

採用活動におけるメディア戦略についてお伝えしてきました。皆様の採用活動の一助になれば幸いです。