「リテンション」とは、もともとは、既存顧客の確保に特化したマーケティング活動を指す用語でしたが、現在はこの概念は人材管理にも活用され、注目されています。
今回はこの「リテンション」を解説し、現代の人材管理にどのように役立つのかを紹介していきます。

■「リテンション」とは?

人材管理におけるリテンションとは、企業が抱えた従業員を維持することを意味します。
現代ではグローバル化や、雇用の流動化、独立が容易になったことから企業と人材の結びつきは以前に比べ格段に弱くなりました。
このような背景から、人材流出の防止や人材不足の解消のためには金銭的報酬・非金銭的報酬の両方の面で魅力的な企業であることが必要であると言われています。この「魅力的な企業になるための取り組み」がリテンションで大切なことです。
具体的には給与待遇の改善、職場環境の整備やワークライフバランスなどがあり、その企業に合わせて効果的な取り組みを行うことが必要です。
日本では人材不足に悩まされている企業は多いのですが、少子高齢化という問題もあるため、現在主力となっている従業員の声がどうしても大きく、将来を見据えて企業の制度を変えるのが難しいという点が特徴的です。
しかし、本来リテンションは特定の世代や性別の従業員に効果的なものではなく、その企業に勤める従業員全員に恩恵があるものなのです。

■多くの企業が抱える「人材不足」の現状

かつて、日本では「新卒一括採用・終身雇用・年功序列制」が三位一体となって企業と従業員を結びつけてきました。しかし、個人のライフスタイルに合わせた働き方改革が推し進められ、この三位一体はほとんど機能しなくなりました。

■金銭的報酬が充分ではない

転職や独立が容易な環境では、実力によって評価されない企業や、給与水準が低い、働きぶりが給与として評価されない企業は魅力がないと判断されます。
また、業界によっては給与水準がそもそも低い業界もあり、このような業界には人材が来ない、人材が来てもすぐに離職するという二重のスパイラルが発生しているのです。

■非金銭的報酬が充分ではない

個性や能力を生かした働き方ができない、希望するスキルを身につける機会がないことも人材の流出につながっています。
現代社会では一人一人のライフスタイルが重視されるようになったため、配属先とのミスマッチや職場の雰囲気が合わない企業、セミナー・研修や新規プロジェクトのチャレンジがない企業は魅力がないと判断されます。
また、残業や休日出勤が多い企業や、ライフステージの変化に合わせづらい従来の雇用タイプしか持たない企業も、プライベートを大切にする若年層からは魅力が少ないと考えられています。

■リテンションの必要性

現在では、従業員にとって魅力的な企業でなければ人材の流出を食い止めることはできません。このため、まずはリテンションを導入して人材の維持に努めましょう。
人材不足と聞くと新規採用に注力しがちですが、コストをかけて育てた人材が定着することが生産性において最も大事なことです。リテンションにはさまざまな方法があり、すぐに始められるコストの小さい施策もあります。
人材を重視していることが従業員に伝われば、従業員は企業を信頼して高いモチベーションを持って働いてくれるようになります。
また、魅力のある企業は求人を出した際も応募がたくさんありますので、たくさんの人材の中から本当に自社に合う優秀な人材を探し出すことができます。

このように、まずは新規採用ではなく、リテンションに取り組んで人材と企業との信頼関係を深めていくことが大切です。