応募から選考が進み、応募者と最後にすり合わせが必要なことが内定後の条件交渉です。採用担当のみなさんにとっては、内定者の方とはもちろんですが、社内の決定権を持つ関係者ともハードな交渉が必要になる業務です。
内定者は自分の希望を叶えるために、就職先決定にはこだわりたいポイントがあります。当然ながら、内定を獲得してからでないと明示されないことが多く、この入社承諾前に「こんなことへもこだわりがあったのか?」と気づかされることも多々ありますよね。それぞれこだわりがあって、転職という大きな決断をするのですが、「前職では実現できない、できなかった要望が市場感とマッチングしていない可能性もある」のも現実です。
そんな内定者に、どのように条件緩和の交渉を行っていけば納得して入社できる状態になってもらえるか。いくつかのパターンを検証していきましょう。

給与面への不満

転職希望の多くの方が望まれているのは年収アップですよね。もちろん現状維持やダウン提示でもOKな方もいらっしゃいますが、将来的にはアップできることが見えていないとなかなか決断できないものです。
採用担当のみなさんは、交渉ポイントが給与条件となったら、「ぜひとも来てほしい人だけど、うちの給与水準だと難しいかな」と考えてしまい、交渉する意欲も下がってしまいがちです。
しかし、諦めるのはまだ早いです。給与面への不満の根底には、「その昇給幅に不満がある」ケースが多くあるように見受けられます。自己評価と他者評価の結果に納得していることを前提にしても、評価による給与増が期待値に届いていない場合、今後の昇給にも期待が持てず、転職を検討し始めます。
つまり、給与に不満で転職される方には「昇給の実例」や「昇給や昇格の評価基準とそれを決める人事制度のしくみ」をしっかり説明することで、前向きに検討してくれる方は増えるまずです(家族への説明にも役立ちますね)。
自分が入社後に頑張って成果を出すことで、1年後、3年後、5年後にこれくらいの給与になれる可能性があることを理解して頂くことで、給与条件の不満を崩すことができます。

仕事への不満

仕事内容を理由に転職される方は、いくつかに分類されます。「仕事自体へ閉そく感や先細り感」「権限が委譲されない」「この仕事を続けていく自分のキャリアに不安」など、さまざまな不安や不満がでてくると同時に、次の会社では、もっと前向きにやれる環境であって欲しいという要求が強くなります。
もちろんやりたいこととお願いする仕事がマッチするならば、問題ないですが、マッチしない場合は、違う役割やポジションからスタートする事が許容範囲かを確認する必要があります。
その場合は、本人の現時点での評価や適性について説明し、希望する仕事を任されるまでには、自社でどのような経験と能力を身に着ける必要があるかを理解してもらいます。現職(又は前職)での仕事状況を再度ヒアリングし、どこに課題があるのかを確認します。そのうえで、自社で活躍してもらうためには、何が足りないかを理解してもらい、どうすれば任せてもらえるようになるかを、自ら理解してもらうのが良いと思います。
もちろん、転職活動中の方は「自分はもっと能力がある」という前提で活動されている方が多いので、自分の課題を抽出できたいないこともあります。そのようなケースでは、他のポジションに適性があることを強く伝えることで、いずれご本人がやりたいことに辿り付くまでの流れを納得してもらえると思います。
内定者も「やったことない仕事」よりも「適性のある仕事からステップアップ」する方が安心感を持てることでしょう。ただし、この情報は必ず配属先の上長と共有し、定期的に達成状況や課題をフィードバックしていくことが重要となりますのでご注意ください。

会社の今後に不安

そもそもみなさんの会社へ応募されている段階で、さほど会社の今後に不安は感じていないと思われがちですが、経営の実態や今後の戦略、業界自体の成長性などを理解できていないケースがほとんどです。
面接を重ねるうえで、そういった情報はアップデートされるでしょうし、世間のニュースや回りの方からの意見で二の足を踏むケースが見られるのも事実です。「本当にこの会社で大丈夫か」「売上や経常利益が右肩上がりとは言えない」「将来的に期待の持てるサービスがあるのか」など、転職理由が同様の場合、改めて承諾前に自問自答してしまうものです。
面接の場では、深く切り込んだ質問ができなかったことも当然あるはずです。この場合は、できれば入社前面談のような形式で、自社の経営陣に具体的な話をしてもらい、安心感を持ってもらう必要があります。業界の成長性、業績の実態、中長期計画の概要などで、プラス材料が示せれば問題ありませんが、そうでない場合は別の方法で理解してもらう必要があります。
新商品の開発や提案への期待や、組織改革を担ってほしいこと、将来の重要ポスト候補であるという話ができると良いと思います。ただ現在の業績が良くなければ、率直に経営課題を解決するための原動力が必要となるため、担える人材として入社してほしいという話もありですね。
入社後の活躍で社内での評価はもちろんですが、社会的に市場価値のある人材になることができるというスタンスで仕事へ取り組んでいただけるようモチベーションを上げてもらえるように向き合っていくのが良いのではないでしょうか。

内定者の入社承諾条件には、そのほかにも勤務地へのこだわりなどもありますが、その交渉の際には、あらためて退職理由を再確認しながら、自社へ期待することを明らかにすることができます。
内定者の不安を少しでも軽減し、逆に期待・使命・乗り越えるべき課題を提示することで入社後に活躍してもらえるように気持ちを切り替えてもらうことが重要です。ただし、面接時にいくら条件緩和を行い入社後の課題を持ってもらったとしても、一番重要になってくるのは入社後における本人への傾聴やモチベーションのサポートであり、可能な限りの課題共有になってきますので、併走していくことを心掛けていきましょう。