みなさんが学んだことの中で記憶に残っていることや役に立っていること、今現在も通用していること=仕事力について、前回までの「話す技術」に続き、「思考術」を今一度、考えていきたいと思います。

■「考え方を考える」という考え方

「考え方を考える」ことは、仕事の進め方の基本です。
いきなり作業に入るのではなく、どのように進めたら求めている答えに辿り付けるのかという「アプローチ」「考え方」「段取り」の部分を最初に考える。
一見遠回りに見えますが、このステップを踏むことで、より効率的に仕事を進めることができます。
若手のころは、特に何か依頼ごとをされたら、いきなり作業に入ってしまいがちです。でも行動へ移る前に、どういうアプローチ方法が良いのかを考えることが最優先だということです。
そう、考え方を考えるとは、なにか頓珍漢な感じがしますが、どのように考えたら答えが出るのか、その手順をまず考えるということですね。
闇雲に作業をスタートさせるのではなく、まずどう考えたら答えが出るのか、その道筋を考える。そしてそのアプローチ方法でよいのか、段取りの段階で合意を得てから、実際の作業に入ること。
システムの開発で言えば、プログラムを組む前に詳細な仕様書や開発スケジュールを提示します。そこで発注元と合意を得て初めて着手するわけです。途中での仕様変更も可能ですが、その場合も変更による影響を再調査して仕様書に反映し、スケジュールを再調整して確認いただく必要に迫られます。
これは、チームへ依頼された仕事の場合は、全員の共通認識が必要ですから実行する場合が多いのですが、自分への依頼の場合などは、ついつい端折りがちになってしまいます。
でもどんな仕事でも、まずは大まかな設計図を描いて、そこから細部に落としていく。自分なりの作業設計手順書を作り、上司や依頼元にOKをもらってから、実行していきましょう。

■どの要素をどう分析すると、答えにたどり着くのかの手順を示す

例えば、採用コンサルティングの仕事は、まず顧客にどんな成果をもたらすことができるのか、という提案書を作ることから始まります。
コンサルティングとは、まず解決策ありきではなく、やってみないと何が出てくるかわからないサービスなのです。
最終の報告書がどういったものになるのかは、提案の時点ではわかりません。でもこの提案書こそが、「考え方を考える」という作業そのものなのです。
採用コンサルティングの提案書は、具体的な内容に踏み込まず、プロジェクトをどのように進めるかを示したものだったのです(提案時点で採用人数〇〇〇名獲得!前年の〇〇〇%UPと来たら、期待するのではなく、???と思いましょう)。つまり、こういう考え方を使ってこれらの要素を調べていったら、その問題が解決できるという手順です。

例えば「採用するためのマーケティング」という提案書の場合です。

①まずはマーケティング活動の目的とゴールを確認して合意する
②全国の求職者や求人の動向を調べます。応募のエリアや所属の業種(または出身大学など)、職種などに分けての結果も分析する
③貴社の応募状況と入社者も同様に分析し、競合他社とも比較
④全国の動向、競合の動向、貴社の動向の3つから、採用が減少している本当の原因を突き止める
⑤報告会を開催し、今後の方針を検討
⑥今後のターゲットとすべき応募者層を決める
⑦アプローチ手段を検討する
⑧これらを2ヶ月で実行する。見積額は〇〇〇 

こういう手順で、そのような分析をしたら、何かしらの有意義な結論が出そうだという気になります。
では、そういう手順で、そういう検討をしてほしいという合意を得られれば、採用コンサルの会社では受注となりますね。
実際の作業やリサーチをするのは、受注後です。
こういうやり方をとるメリットは以下の3点です。

①作業の全体像が見えるので完成までの道筋がわかり安心感が生まれる
②関係者同士で手順やアプローチ方法を合意しておくことで、後出しの要求や言った言わないの水掛け論もなくなる
③事前に、作業の難易度や作業量の見積もりができる

では実際の作業手順を身近なテーマで考えてみましょう。
「4人で国内旅行に行くとします。どういうアプローチで旅行先を決めますか?どういう手順で検討したらスムーズに決まると思いますか?」 
以下のような手順ではいかがでしょうか。

①まずは休みが取れる日程をすり合わせる。休暇が取れる日数、日程の合意を取り付ける
②どこに行くかを決める。日程内で行ける場所を8個あげて、何ができるか簡単にリサーチする
③観光・グルメ・体験・費用の4視点からなる評価表を作り、みんなで打合せ
④一番評価の良い場所を確認し、みんなで合意する

これは日程⇒行先⇒内容というアプローチ。もちろん優先順位を変更するアプローチもOKです。
つまり、何を優先して決めるかという考え方を最初に示して、みんなに納得してもらう必要があるのです。
これを合意していれば、後戻りもどんでん返しもないはずですね。

まとめ:仕事は、
①大きな設計図を示し手順について合意を得る
②手順に基づいて細部の作業を進める

ここまで、お読みいただきありがとうございました。
次回は学ぶ仕事力〈その2〉-思考術(後編)-です。よろしくお願いいたします。