採用活動をしている中で、「面接中と入社後の印象がまったく違う」といった経験はないでしょうか。中途採用の面接は大体2回程度の企業が多く、1回あたりは30分から1時間程度といわれるなか、この短時間で求職者の本質を見抜くというのは本当に難しいことです。
今回は、そのポイントをあらためて確認していきたいと思います。

■面接ですべてを知ることはできません

まず前提としてお伝えしておきたいのが、「面接でその人のすべてを知ることはできない」ということ。
「良い人材が欲しい」「本質を見抜きたい」
そう考えると、実績や経歴などでは表せない、多くのことを知りたくなると思います。さまざまな質問を投げかけ、多くの情報を引き出そうとしてしまうこともあるでしょう。
しかしそれを意識しすぎると、目的意識の低い質問が増えたり、限られた面接時間のなかで不要な質問に時間を使ってしまったりする可能性もあります。大切なのは質問ごとに「その人の何を知るための質問か」を明確に設定しておくことです。「仕事への考え方」や「会社に求めること」「物事のとらえ方」など知りたい内容を検討し、それを引き出すための質問を考えていきましょう。

■内面=本質ではない

「人の本質を見抜く」ことを考える時、多くの人は内面(心理的な部分)を中心に考えます。
しかし、人の本質を考える上で内面ばかりに気を取られてしまうと、目に見えやすい表面的な部分の分析が疎かになってしまうこともあります。
例えば、最近の傾向では面接において、マナーや話し方、髪型や服装などはそこまで気にせず自由に振る舞って問題ない、としている企業も数多くあります。ただ、それは「表面的な部分を見なくても良い」というわけではありません。「自由」とされているなかで、その人がどんな髪型や服装を選ぶのか、どんな対応をするのかによって、物事のとらえ方や仕事への考え方が見えてくることもあるのです。
面接において「本質を見抜く」というのは、少ない情報から内面を分析する、ということではなく、表面的な情報と内面的な情報を合わせ、その人を正しく評価することを指すのです。その上で、その人が「自社の体制や方針とマッチしているか」、「自社が求めている人材か」を考えていくことが大切です。

■自分の言葉で回答してもらう

形式ばかりを意識した面接方法では、緊張してうまく物事を伝えられない人がいる一方で、普段態度の悪い人でも、正しい敬語や言葉遣いで本質をごまかすこともできてしまいます。
会社と求職者、お互いが満足できる面接をするには、面接の場をリラックスできる環境にして「自分の言葉」を引き出す必要があるのです。自分の言葉で回答してもらうには「できる」「できない」と答えられる質問ではなく、「なぜ〇〇なのですか?」といったように、回答に必ず思考が伴う質問をすることが大切です。質問を作る際には、模範解答がないものを考えることも「自分の言葉」を引き出す重要なポイントです。

■本質を見抜く面接のポイント

ここからは、実際の面接の場で使いたい質問例や、面接の仕方の例をいくつか挙げていきます。

1.物事のとらえ方
物事のとらえ方を知るためには、そのとき話題になっているニュースなどについて意見を求めるのも方法の一つです。政治や海外情勢についてなどの難しい内容ではなく、だれにでも親しみやすい話題をピックアップすると、本人の意見を出しやすいかもしれません。
また、さらにその人の考え方を深堀りしたい場合、あえて相手と逆の意見を出して反応を見るのもいいでしょう。その話題に対して肯定的な考えであれば批判的に、批判的な考えであれば肯定的に反応しディベートすることで、よりその人の本質に近い回答が期待できます。
回答を用意しておくことが難しいため、「自分の言葉」を引き出す効果もある質問です。ただ、威圧的に反対意見を出してしまうと萎縮して本心が引き出せなくなることもあるため、前述した「リラックスさせる」ことをより意識する必要があります。

2.判断基準
「なぜ、この会社を選んだのですか?」という質問を面接の序盤にする面接官は多くいます。
しかし、この質問は求職者の仕事における判断基準を知る大きな手がかりとなるため、模範解答が生まれやすい序盤は避けるべきです。人の判断基準を知ることは、損得・善悪・美醜などの優先順位と傾向を知ることです。そのため、場が温まり「自分の言葉」が生まれやすくなった面接の後半に切り出すことをおすすめします。

3.責任感
責任感がどれくらいあるのかを知りたい場合は「今までの失敗談を聞かせてください」という質問が的確です。責任感の強い人は、責任のない行動のリスクを知っている人です。失敗から何を学んだのか、具体的に表現できる人材は、責任感の強い人間である可能性が高いです。

4.仕事への熱意
仕事への熱意を知るには面接の最後に「何か質問はありますか?」と逆質問を求めることが有効です。
ほぼ全ての面接で逆質問は行われているため、求職者は必ず対策をしてきます。事前準備ができるものなので、企業に対する熱意の分だけよい質問を用意してくるでしょう。ほかの質問で「自分の言葉」で回答させることも大切ですが、どれだけ事前に準備をしてきたか、ということも評価対象になることを忘れないでください。

■まとめ
今回は短い時間・回数で求職者の本質を見抜くために必要な考え方や質問例をご紹介してきました。
面接だけでは相手の本質を見抜くことが難しいのは事実です。
しかし相手の働きたい、入社してみたいという気持ちと、会社がこれからも発展していきたいという思いをつなげる大切な場です。ぜひ常にブラシュアップし、よりよい人材との出会いの場をつくっていきましょう。